妻のサラとは別居、ガールフレンドのジンジャーと同居中の作家のトム。「究極のクリスマス・ブック」を作ろうと考えた。寄稿依頼者はウディ・アレン、アイザック・アシモフ、スティーブン・キングからリチャード・ニクソン、チャールズ・シュルツ、アンディ・ウォーホール等超超有名人ばっかり!
しかし、担当編集者はころころ変わって悪くなるばかりだし、作家は変人ばかりで交渉も大変だ。
しかも私生活ではサラの元亭主ランスが家に転がりこんでくるし、実の子供とサラの子供とうまく折り合いつけていかなければならない。そしてサラはよりを戻したがっている。
果たして本は出版できるのだろうか。そしてトムの明日はどっちだ!
ニューヨーカーの作家トムの一人称で描かれる犯罪のない軽いコメディー・タッチの作品です。
まずは超有名人とのやり取りが笑わせてくれます。すぐに非の打ち所のない契約書を送り付けてくるシュルツとかもういいと言っているのに珍妙なエッセイを送りつけてくるアシモフ(編者としてすぐれたクリスマスのミステリー・アンソロジーがありましたね)とか。冒頭ウエストレイクは登場人物がすべて架空であり有名な名前はただの有名な名前にすぎないと断り書きを入れてありますが、日本じゃこういうのは無理でしょうね。
そして淡々と描かれる男女と親子、家族と友人の生活がいかにもニューヨーカーといった感じで面白い。お洒落でトレンディーとは思いませんが違う世界のお話みたい。日本だとジメジメしちゃうようなエピソードの連続ですが、とてもドライに描かれていてこのへんがウエストレイクの資質なんでしょうね。
主人公のトムをはじめ出てくる登場人物はみな欠点が多い問題ある人たちばっかりですが、人間味あふれとても魅力的です。そしてみんな一生懸命生きている。
この軽さ、いかにもアメリカ的かつニューヨーク的だと感心しました。犯罪はありませんがアメリカ小説好きなら是非お勧めします。