ニューヨーク・ギャング団の若き幹部エンジェルはボスのニックから死んだ運び屋チャーリーの墓を掘って、ヘロインが入ったスーツを持ってくるよう命じられた。いやいや従ったエンジェルが開けた棺の中には誰も入っていなかった!
しかしニックはエンジェルの話に聞く耳をもたず、ただスーツを探して来るよう言い放つのみ。ボスの期待を裏切るわけにはいかない。
かくしてエンジェルはチャーリーの死体探しを始めるが最初に訪ねた葬儀屋は殺されていて、エンジェルが殺人犯と疑われ警察に追われる破目になる。謎の女は現れるし、母親はうるさいし、ガールフレンドは毎回置手紙を残していくし、ニックは急かせるし。
果たしてエンジェルはチャーリーのスーツを探し出せるのか?
1966年の作品がウエストレイクの死後2009年に邦訳されました。訳者による解説に詳しいですが、ちょうどウエストレイクが初期のハードボイルド調からコメディー路線に進もうとする過渡期の作品となります。「吾輩はカモである」より古い作品なのですから。
いかにもニューヨークという描写に壮大なこけおどしの葬式、墓堀り等この後もウエストレイクが使うことになるアイデアがもう色々使われています。
主人公が組織の一員で組織の理不尽な命令に従わざるをえないという設定は後年のウエストレイクにはないものですね。新鮮でした。
まだそれほどドタバタ度は高くありませんが、マニュアル車にまつわるギャグとか笑える要素もいっぱいあります。そしてウエストレイクの持ち味である軽く洒落れているセンスは全編いかんなく発揮されています。
まだまだ未訳の作品がいっぱいあるので一作でも多く翻訳してもらいたいものです。