キャビア泥棒に失敗し、警察に追われたドートマンダーが逃げ出した先は女子修道院だった。修道女たちが警察に突き出す代わりにドートマンダーに依頼してきたのは超大金持ちの父親に誘拐され脱洗脳させられているシスター・マリア・グレイスを盗み出すことだった。
しかしグレイスが閉じ込めれれているのは父親所有のありとあらゆるセキュリティが施されている76階建のビルの最上階。しかもドートマンダーたちが決行した日はよりによって、南米でクーデターに協力するための最新鋭の武器を持っている傭兵部隊が集結している日だったのだ!
邦訳は14年ぶりの出版となった一作です(日本では前作「逃げ出した秘宝」の方が後の出版)。そしてこの巻から出版社がハヤカワに変わり、翻訳も木村仁良氏が専任となります。文体もぐっと乾いた感じになり、解説も充実しています。
ウエストレイクには「聖者に救いあれ」というNYの男子修道院を舞台とする傑作があるのですが、世俗を離れた修道院の生活に面白みを感じているのか、今回は女子修道院のみなさまがまず笑わせてくれます。
そして狙われる大金持ちのフランク・リッターの生み出す数々の警句「元気であるためには、元気に見えなければならない」もバカバカしくて面白い。
一方のドートマンダー一味も鍵師のウィルバー・ハウイーというとりわけ変わったキャラが登場し、いつも以上にずっこけさせてくれます。その他タイニーの純情ぶりとかシリーズならではのキャラクターの性格も存分に楽しめます。
全体的には大味であまりにものご都合主義といった感じもしますが、久々のドートマンダーを堪能したものでした。